mirage -4-




元の世界に戻ってから、1ヶ月が過ぎた。
あれから鏡の世界には行っていない

鏡にはなるべく近づかないようにしてるし、相変わらず「向こう」の人が映りこむときもあるが別にどうというわけでもない。
周りも、「あの日は調子がおかしかったんだ」程度で済ませてくれたようで
今となってはその事すら忘れられている。
いつもと変わらない、当たり前の風景だ

              一つの出来事を除いて・・・




「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
ありえない。

「夜見子・・・私より成績ひどいって相当だよね・・・」

返す言葉もなかった。

いつもより40番も落としてる・・・
勉強は欠かさずやってきたし、テスト本番だって手ごたえはあったはずなのに・・・

「!!!」
そこまで考えて、はたと気づいた。


確か鏡の世界に行っていたあの日・・・テストがあったはず・・・・・・・

そうだ、思い出した。あちらの世界でもそのテストを受けていたからこちらでも受けていた気になっていたが
あちらの世界の成績はこっちに反映されないんだ・・・

仕方のないこととはいえ、あの日向こうの世界に行った自分を呪った。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「元気だしなって夜見子!
そうだ!いつものクレープ屋さんでクレープ食べよ?今日は私のおごり!」
「でも明美、今日彼氏さんと帰る日じゃ・・・」
「親友が落ち込んでるのを放っておける訳ないじゃん!諒(りょう)なら分かってくれるもん、大丈夫大丈夫♪」
「明美・・・」
今日は、明美に甘えることにした。

だが家に帰っても気分は晴れなかった。
成績を見た母親は、激怒こそしなかったが明らかに顔は青ざめていた。

普通の家庭はこういうとき面倒だ。
成績や通ってる学校、その中での態度はすぐ噂としてご近所に広まる。
「・・・・・・・はぁ・・・・・・・・・」
ため息ばかりで何もする気が起きない。


「・・・顔洗ってこよ・・・」
このままじゃ、何も出来ずに1日が終わってしまうような気がした。

顔を洗い、自分の顔を見る。「死んだ顔」というのは、まさにこの顔なのかもしれない。
「はぁーーーーー・・・・・・・・」
再びため息をつき、鏡に頭をもたれかかった・・・・・・のがいけなかった!!!!!

「きゃっ!!!」
波紋が広がり、光が包み込み、一気に吸い込まれる!!



気がついたのは、何時間後か。

「夜見子・・・いつまでそんなところで寝てるの?」
母の声に飛び起きた。
近くの時計を見る      ・・・・・・・・朝8時半!!!!???
「ちょっともっと早く起こしてよ!!!!!!!」
身だしなみもそこそこに家から飛び出した。




・・・・・・・・・考えてみれば、私がこちらの世界にいる意味はない。
学校に到着する前に、どこかの鏡にでも飛び込んでおけば良かった





学校に到着すると、廊下の張り紙の前で生徒達が騒いでいた。
ちなみにこの翠陽高校では、成績上位の者は廊下に張り出されることになっている。
なのでこの廊下のざわめきは別段珍しいことでもないのだが・・・

私に気づいた生徒達が、今度は私の方を向いて騒ぎ始める。
またか・・・とは思ったが、何か様子がおかしい。

「夜見子!夜見子〜!!」
ぱたぱたと明美が駆け寄ってくる。だが、相変わらず向こうの世界の明美のようなオーラはない。
だが駆け寄ってきたその一言目が強烈だった。

「夜見子、成績上位おめでとう!」



・・・・・・・・・・・・・・・・!!!!!!!!!!!???????


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